国際総合学類3年 神長 広樹

 

調査動機:

交換留学生として過ごす傍ら、その残り滞在日数もわずかとなってきました。その限られた時間を最大限有意義に過ごすためにも、今、これまでを振り返り、反省することは非常に効果があると思ったからです。また、友人の思いを聞くことで、自分を見つめなおす良いきっかけ、刺激にもなるのではないかと。

 

調査方法:

インタビュー方式。対象は1年間の日本人交換留学生で、すでに1学期を過ごした者。

 

基本質問事項:

0 「どうしてリトアニアを選んだのですか?」

1 「これまでの留学生生活を1冊の本にすることが決まりました。タイトルとその理由を教えてください。」

2 「留学開始当初、去年の9月にタイムマシンで戻りました。何からやり直しますか?」

3 「リトアニアに来て自分自身に変化はありましたか?プラスのこと、マイナスのことも教えてください。」

4 「こちらに来てから、もっともトキメイタ瞬間はいつですか?」

5 「リトアニアのお国自慢をしてください。」

6 「何かリトアニア、あるいはリトアニア人にアドバイスをしてみてください。」

7 「“リトアニア”を日本語1語で表してみてください。」

8 「もう1学期、国を変えて留学するとしたら、どこの国がいいですか?」

9 「留学してみて、“日本人”を強く感じることはありましたか?」

 

本レポートの様式:

質問ごとに回答だけを羅列。

 

対談者:

funayama               kaminaga
舩山 未帆        神長 広樹(筆者)

 

0 「どうしてリトアニアを選んだのですか?」

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舩山「実は、積極的な理由というのはなくて、協定校の中で、現地語が話せるなどの条件がなく、自分が行ける中で、あまり皆が行かない所に。留学って今はありふれたものだと思うから、その中でも変わったところに行きたかった。」

 

神長「ぼくもほぼ同じ。英語圏の外がよかった。英語圏は人気だから。今も昔も多くの人が学び、多くのことを吸収して日本に持ち帰ってきた。自分よりも遥かに優秀な人が、しかも大勢が学んだ土地で、自分がなにか新しいものを発見し、吸収して、日本に還元する、その自信がなかった。それだったら、メジャーではない国に行って、その地域について、少なくとも筑波大学では一番詳しい人材になったほうがよっぽど面白いし、貴重なんじゃないかなって。バルト地域の中でヴィリニュス大学を選んだのは、文系の学生でも理系の授業を受けることができたから。実はこっちが当初の理由で、バルト親善大使になろうと思ったのは最近だけどね。」

 

舩山「留学そのものをしようと思ったのはどうして?」

 

神長「浪人時代に、もう一度大学をしっかり調べている中でアメリカの大学の様子を知って。そこに流れているらしい、本場の“自由な風”に強く憧れた。でも、私費で行くと学費だけでも3桁超えるから金銭的に無理となって。絶対に交換留学をするぞって決めてた。その時はアメリカだったね。」

 

舩山「私は対照的に大学2年生の後半、留学開始の直前の時期に。その時、マルタ共和国に1ヶ月間の語学研修に参加して。その時、“英語ができれば、こんなにも世界中の人たちと繋がれるんだ!”って感動して。その感動が大きくて。そのときは英語と異文化交流っていう感じだったから、今度は一年間交換留学生として他の留学生と肩を並べて勉強したいと思って。ヨーロッパの街の様子も、すごく綺麗だったから憧れたってのもあるかな。」

 

 

 

1 「これまでの留学生生活を1冊の本にすることが決まりました。タイトルとその理由を教えてください。」

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舩山「“はじめまして”を入れたいなって思った。完全に未知の国、リトアニアに対して。でも、本にするには足りないところもあって。まだ、リトアニアマニアになりきれていないところ。留学生活だけで完結してしまっていて、地元の人の生活の中に入れていないところ。だからこのタイトルは、今までの反省を踏まえつつ、これからの残された留学生活の意気込みでもあります。」

 

舩山「こちらの生活で、中学校の日本語クラブや日本語スピーチコンテストにおじゃました時、彼らがすごく日本を好いてくれていることを目にして。嬉しかったけど、反対に、私はリトアニアという国をヨーロッパの中の一国家程度の漠然としたイメージしかなく、リトアニア人の精神性とか特異な部分を見出していない気がして。もうちょっと深いところに行きたい、地元の人と関わり合いたいって。だから、前期よりもリトアニア語に力を入れ、現地の言葉で、直接話したいなって。」

 

神長「現地語は大切だね。“ありがとう”だけでもリトアニア語で伝えると、ぱっと表情が明るくなるから。」

 

神長「ぼくのタイトルは“ドラマ”。エストニアのタリン大学で映画を作った経験が大きいんだけども、映画を見る側から作る側になってから人をよく観るようになった。その人の、表面上では表現していないところを。例えば、言葉の裏に隠れた背景だとか、動作、日常の動きなど。だんだんと養われていく中で、少しずつ想像力も培われてきて、こう思うようになった。“どんな人だって、20年間生きていれば、少なからずドラマがある”って。個人の歴史みたいな。留学する前までは、どちらかというとビジネス思考で、起業したいって思ってたし、だから技術面というか、感情的なものでない方にフォーカスしてて。それで、こちらに来た。」

 

神長「特に東欧の人(バルトやポーランドを指しています)って歴史の束縛が強いじゃん?歴史が考え方や物の見方に影響を与えていて。ぼくは最初、それを否定していた。」

 

舩山「その影響を与えているというのは、話に歴史を持ち出すっていうこと?」

 

神長「例えば、ポーランド人の家に泊めてもらった時に会話のトピックが“未来”についてになって。ぼくは“人工知能やICTの進化によって、歴史とか関係なく、待ったなしの変化の時代になる”って主張するわけ。それはそれで、合っていると思う。馬鹿だったのは“だから、歴史などを引き合いに今を見るのはナンセンスだ!”と言ってしまい、喧嘩になった。

その人は“日本人はそうかもしれないけど、私達は違う。私達はこういうアイデンティティがあって、(占領の経験から)人々との団結や自分たちの“もの”を重視する。それは、時代に反しているかもしれない。でも、だからといって、私達は新しい物をなんでもいいものだと見なすことはしない。”と。今にして思えば、立派な主張だった。ぼくは異文化コミュニケーションができていなかった。」

 

舩山「その人や国の歴史、ドラマを認めなかったんだ。」

 

神長「そう。個人を見るという目を持っていなかった。大きな目で見ることも必要だよ。でも、自分がこうして誰かと対面するとき、その時はお互いに“個”なんだ。その時に歴史を軽視するということは、その人を形成しているアイデンティティの一部、国民性を軽視することで、ひいてはその人自身の一部を否定することにつながるって、やっと気づいた。」

 

舩山「こっちの人って繊細な感じがするよね。きっと日本は侵略された歴史がないからなんだろうね。しかも、侵略したということにも疎い。こっちへ来て、国際関係とか話すときに、すごく気をつけなければいけないんだなって思うようになった。」

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神長「国際関係って大きな話ではなくて、一歩外海に出れば自分自身が“文化の国境”となる。さっきの話しなら、いきなり日本がポーランドの隣国となって外交をする。留学生活では、そうした外交がどんどん行われる。でも、普通の生活ではそうした外交は表面上で終わることが多い。誰だって衝突は避けたいから、ありきたりなテーマで済まそうとするし、相手と本気で向き合うことを今更することは照れくさい。でも、それでは何も得られない。そのことに気付かされたのが、前回のレポートで行った、リトアニア人へのインタビューだった。リトアニアで過ごしてきたけど、彼らのことなんてちっとも知っていなかった。」

 

神長「映像を作る側になって、ドラマを考え、ドラマを見つけようとする側になって、もうその人の内にドラマはあるじゃんて気づいた。何が好きで、それにまつわるエピソードとか。そして、それを聞くのが面白いって思うようになった。血の通った、ノンフィクションのドラマが。そういうのを元に、またストーリーを考える。考えたストーリーを伝えて、リアルなフィードバックをもらって。ストーリーはフィクションだけど、どんどんリアルになっていって。これがまた面白くて。残念ながら、役者をやってくれる人がいないので、映像化できていないんだけども。」

 

 

 

2 「留学開始当初、去年の9月にタイムマシンで戻りました。何からやり直しますか?」

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舩山「前のルームメイトと仲良くなれなかったことを後悔していて。馬が合わなかったというのもあるんだけども、“仲良くしたいんだ”という態度を自分が示せなかったというのもあると思っている。人間として合わない仲でも、もっとできることはあったんじゃないかなって。どうですか?」

 

神長「実は9月ではなくて、サマースクールを終えて旅をしていた8月が一番後悔していて、そこに戻りたいんだけども。旅先で会う人ともっと仲良く話せばよかったなと。英語に自信がなかった、何について話したらいいのかわからなかったという理由もある。でも一番は、そうした理由で沈黙し、つまらないやつだと思われるのが怖かった。土俵に上がることを避けていたんだ。派手な背負投をくらう覚悟で、自分から話しかけたり、フレンドリーに応えるべきだった。」

 

舩山「もうひとついいですか?だれかと一緒に過ごす時間が足りなかった。課題など自分の時間ですべきことは早めに終わらして、誰かを誘ったり、一緒に遊んだり、会話したり、飲みに行ったりすればよかった。」

 

 

 

3 「リトアニアに来て自分自身に変化はありましたか?プラスのこと、マイナスのことも教えてください。」

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舩山「世の中は自分が知らないことばかりなんだなって。日本にいるときは、例えば先ほどみたいに国際政治の話題を日常でする友人とかもいなかったし。自分は浅はかだったんだなって。これかな。プラスであり、現時点ではまだマイナスのままという意味で。」

 

神長「プラスは、質問の仕方などを考えて、相手が話したいこと、面白いことを引き出そうと努めるようになったこと。自分自身で完結しないようにって。マイナスは、徐々にハングリー精神を失ってしまったこと。例えば、いつでも語学力をあげることはできるって思って、“なら後でいいや”ってなおざりにして来てしまった。語学を習得することを目標とするのではなくて、その語学を使って今ここで会話を楽しむことを目標にしとけば、期限決めたりして、ストイックに励んでいたのかもしれない。」

 

 

 

4 「こちらに来てから、もっともトキメイタ瞬間はいつですか?」

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warmovie神長「趣味だからという理由もあるけど、エキストラとして2回、映画とCMの撮影現場に行き、現場の雰囲気の中に身を置くことができたこと。何か特別なスキルがあるというわけではなく、ただ自分が日本人であるという理由だけなんだけども。それでも2回目のエキストラの役目を終えた後で人材斡旋会社から、“エキストラ候補として社のリストに登録させてください”と言われた時は嬉しかった。認められたような気がして。」

 

*大日本帝国陸軍の役

 

舩山「貴重な体験でしたね。私は、リトアニアではないんですけど、1月にブダペストからオーストリア、クロアチア、ボスニアと旅行して。行く先々で、おかげさまで人と話し合うことができて。まったく接点のない人の人生に少し関われて、またその人が私の人生に関与してという、不思議な感覚をその時抱いて。今までこんな感覚を味わったことがなくて。」

 

舩山「例えば、ベンチに腰を下ろし休んでいたとき 30~40代くらいの男性が“町を案内するよ”と言って声をかけてきて。当初10€で、という話でしたが最終的にはそういったものは無しで案内して頂け ることになり、有名なワインのお店、お願いやお礼のために、たくさんの人が訪れる石の門、ダンテの孫が働いていた薬局、彼がよく訪れるという失恋博物館な どに案内してもらい、ガイドブックには載っていないようなことまで教えて。もし私一人だったら、おもしろいエピソードなんて聞けずに、ガイド ブック片手に彷徨っていたなーって。」

 

舩山「彼のガイドは、自分の知識を少しでも多くの人に伝えたい、自分の町を知ってもらいたい、という情熱にあふれていて。そしてそんな人がいることに感動しました。私も、日本に帰ったらそんな思いやりを持った地元民でありたいなって思った瞬間です。」

 

 

 

5 「リトアニアのお国自慢をしてください。」

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舩山「ものを大切にするところ。ニットを編んだり、使い古したファーを切ってブーツの中に入れたり。決して裕福ではないという理由からなんだろうけど、日本人が失ってしまった精神がまだこの国にはしっかりと生きていて。今の日本人は“新しい=かっこいい”で浪費気味にある気がする。」

 

神長「ぼくは、人と人との間にスマートフォンなどのデバイスを挟むことをあまりしないところ。二人きりでいるのに、一方がスマホをいじりながら話を聞く、なんてところは見たことがないし、友人でもスマホを使用するときは一度断る人が多い。カフェでもカップルがスマホをいじることなく、ずーっと入り浸っているし。」

 

舩山「私あれがすごくいいなって思います。距離が近いところが。日本人とのデートとは違うなって。こっちの人は会話で心を通わせることが重点で、日本人はアトラクションや映画などで心を踊らせることを重要視してるのかな。」

 

舩山「これいいですね。もうちょっと自慢できること探しましょうよ。例えば、ビールがどこのお店でも種類が多くておいしいとか。黒があり、白があり、チェリーがあり。おまけに安い!」

 

神長「これ世の女性を敵に回しかねないけども、綺麗な人ほど普段底の平らなスニーカーを履かない。運動用品メーカーが作る靴を履いている。デートの時だけ、おしゃれで足元を飾っている気がする。たぶん理由があって、こっちの人って足のスタイルが全然違うじゃん?シュッと引き締まっていて。そして、歩くのが速い。きっと普段から歩くことを意識していて、底が平らなスニーカーよりも歩くのに適したものを履いて、普段の生活で美しくなろうとしているんだと思う。それから、かばん。皆少し高級な手で持つタイプのかばんを持っているじゃん?リュックとかトートとか姿勢が崩れやすいタイプのかばんを持っている人は少ない。リトアニア女性に美人が多いのは血もあるんだろうけど、本質的にはこういう普段の生活にあるんだと思う。変な見栄を張ったり、楽だからと体に悪いことはしないなど。」

 

 

 

6 「何かリトアニア、あるいはリトアニア人にアドバイスをしてみてください。」

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舩山「もっと自分の文化に誇りを持ち、宣伝していいと思う。民族衣装とかバルトの紋様とか。まだまだ日本には知られていないし。政府がプロモーション費用をなかなか工面できないという理由もあるのだろうけども。個人レベルで写真や記事をもっとアップロードしてもいいんじゃないかな。」

 

神長「中心地に街灯を増やし、夜間のバスの電灯を明るいものに変え、物理的に明るくなるところから盛り上げて欲しい。あと、デンマークやエストニアで出会った店員さんのように目があったら“ニコッと”してくれるといいな、というかイチコロ。街も人も美しいのだから、明るく笑って欲しい。」

 

 

 

7 「“リトアニア”を日本語1語で表してみてください。」

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舩山「“癒し”。時間がゆっくり流れている所。首都のヴィリニュスでもそう感じるから、地方にいったらもっと顕著なんだと思う。私は友人の家族にお世話になっていることも大きいのかもしれない。」

 

神長「“漂泊”かなーっ。あるリトアニア人が言ってたんだけど、誇れる歴史がないから国民としての確固たるアイデンティティがない。だから、異文化に寛容なんだって。自分たちの世界に誇れる基盤を探している感じを受ける。もしそれが見つかり、自信を持ったら国として大きく飛躍するのかもしれない。現実的には“見つける”というより、新たに“創りだす”というスタンスが望まれるんだろうけども。優秀な人材は外国へ行ってしまうから難しいね。」

 

 

 

8 「もう1学期、国を変えて留学するとしたら、どこの国がいいですか?」

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舩山「イスラム教圏の国へ行って、彼らの生活に浸りたい。」

 

神長「国で言うとフィンランドかスウェーデン。ぼくの専門である電子政府が発達していて、一人あたりのGDPが高く、それでいてスローなライフスタイルを送っているという。どうしてそんなことが可能なのか、肌で感じてみたい。」

 

 

 

9 「留学してみて、“日本人”を強く感じることはありましたか?」

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舩山「“日本バイアス”があることに気づいてしまった。日本人です、と伝えた時に、“おお!”と反応する人と“ああ、そうですか”と反応する人に別れて、それで自分に対する接し方が変わるのが悲しくて。自分にはそれ以外に価値がないのかなって。人として、そういうのを取っ払ってあまりある魅力がある人になりたいなって思った。日本に生まれた付加価値だけだなって。そう思いませんか?」

 

神長「その“良い”バイアスを築いてくれた偉人たちにはすごく感謝する。ありがとうございますって。逆に自分は相手に対してあまり何人かを意識することはない。そりゃあ、冒頭の挨拶で“どこの国から来たのですか?”と聞くよ。でも、例えばその後に“その国(街)で有名なのは何ですか?”、“何かエピソードはありますか?”みたいに個人的なことを聞くためのたたき台くらいにしか認識しない。何人かということよりも、何者か、に興味があるから。そして、相手もそれを知ってほしいんじゃないかなって思うから。ぼくらがそう思うようにね。」

 

神長「ぼくは日本車を見て嬉しく思うことだね、やっぱり。」

 

 

 

おしまい。

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